デスクトップPC自作 CPU検討 ~Intelか、AMDか~

下の記事で書いた通り、Windows7 のサポート終了を契機に、8年ぶりにデスクトップPCの自作をしようと思っています。

デスクトップPC 買い替え検討中
最近、自宅のデスクトップPCの買い替えを検討しています。 自作かBTOか検討してみましたが、情報収集やパーツ選びが好きなので自作を軸に検討したいと思います。 これから徐々に情報を集めてWindows7 のサポート終了までに買い換える予定です。

久しぶりの自作で最近の事情を知らないため、絶賛情報収集中です。
今回はパソコンの計算能力を左右する要のパーツ、CPUについて調べたことをまとめてみます。

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現状のCPU情勢

8年前に自作した時はIntel Core iシリーズが性能で他を圧倒していて、高性能を求めるならIntel 一択という雰囲気でした。
私もSandy BridgeのIntel Core i7 2600Kでマシンを組み今でも現役で使っています。
長らくIntelの時代が続いていたのですが、2017年頃AMDから新型CPUのRyzenシリーズが登場し、状況が変わって来ました。
RyzenシリーズはIntel Core iシリーズに対抗できる性能で、かつコストパフォーマンスも良かったため、徐々にシェアを伸ばしています。
Ryzenシリーズの登場はCPUの選択肢を増やすだけではなく、Intelを脅かすことにより開発競争、価格競争を促進することになり、CPUの性能向上や低価格化に繋がっています。
これは自作をするユーザーからすると嬉しい状況です。
そして、つい先日の2019年7月初頭にはさらに性能をブラッシュアップした第3世代のRyzenシリーズが登場し、AMDがますますの攻勢をかけてきています。
新しいPCを組むにはなかなか良いタイミングと言えそうです。

結論 ~現状どのCPUを選ぶべきか~

こまごまと説明をする前に結論を書いてしまうと、現状はAMDのRyzenシリーズの方が買いだと思います。

今買うとしたら、最近発売された第3世代のRyzenシリーズが良いでしょう。
スレッド数の多さで従来から優位性があったマルチスレッドの性能には更に磨きがかかり、第2世代でIntel Core iシリーズに遅れを取っていたシングルスレッドの性能も改善し見劣りしなくなってきているようです。(まだレビューが少ないので、慎重を期すなら少し様子を見ても良いと思いますが。)
発売直後ですが、価格はIntelのライバル製品とそう変わらず、コストパフォーマンスも悪くないです。

最高性能を求めるなら12コア24スレッドのRyzen 9 3900Xですが、個人的にはRyzen 7 3700Xが性能、コストのバランスで優れているように思います。TDP65Wで扱いやすいというのもあります。

もう少しコストを重視するならRyzen 5の3600、3600Xも良いですし、だいぶ値下がりしてきた第2世代の2700X、2600X、2600あたりもお買い得感があります。

Intel Core iシリーズの性能が低い訳ではなく、一部のゲームではIntelの方がパフォーマンスが良い場合があることや、長年業界で一強であり続けた信頼性を重視して、Intelを選択するのももちろんありだとは思います。
Intel Core iシリーズを買うなら第10世代の登場を待ってみるのも良いかもしれません。

CPUの性能について

自作を考えるような人には常識的な話かもしれませんが、CPUの性能指標、スペックシートに載っている数値の意味を簡単にまとめてみました。

コア数・スレッド数

コアとは、CPUの中枢とも言える部分で、ここで計算処理を行います。
最近のCPUはマルチコアと言って、そのコアを複数個搭載しているものが主流になっています。
コアが複数あると計算処理を分担することができるので、処理速度が早くなります。
平たく言えばコア数が多い程性能は高くなります。
ただし、ソフトウェアによってはマルチコアに対応しておらず後述のクロック周波数の方が重要になる場合もあります。

また、ハイパースレッディングという技術により1つのコアで2つのタスクを並行処理できるものがあります。
ハイパースレッディングを搭載しているCPUはコア数の倍のスレッド数を持つことになります。
CGレンダリングや動画エンコードなどの並列処理が有効に働くソフトウェアにおいては、スレッド数が多いことが有利に働きます。

例えばコアが4つで、ハイパースレッディングに対応していないものは「4コア4スレッド」、ハイパースレッディングに対応しているものは「4コア8スレッド」となります。

最近の上位モデルだと8コア16スレッドや12コア24スレッドと非常にコア数が多いものが出ています。

クロック周波数

クロック周波数は1つのコアが計算処理する能力の指標です。

デジタルの計算処理は「0」、「1」の2進数で、要は電流の「オン」、「オフ」を高速で切り替えることにより情報が処理されています。
クロック周波数はこの切り替えの速さを表しています。早く切り替えられるほど同じ時間内で多くの情報を処理することができます。
数値は1秒間に何回のオンオフ切り替えがあるか、という周波数の単位Hz(ヘルツ)で表されます。
1Hzなら1秒間に1回、1000Hzなら1秒間に1000回という感じで数字が大きいほど高性能です。
CPUのクロック周波数はGHz(ギガヘルツ)のオーダーになります。
ギガは10億なので、1秒間に数10億回という恐ろしいほどの高速の処理が行われているということです。もはや、訳のわからない速さですね。

ところで最近のCPUだと、大概スペックシートにクロック周波数として2つの数値が載っていると思います。
小さい方の数値はベースクロック、大きい方の数値は最大クロック、ブーストクロックなどと呼ばれます。
最近のCPUは通常時はベースクロックで動作し、負荷が大きい時はクロック周波数を上げることができるようになっています。クロックアップの上限がブーストクロックということです。
ベースクロック、ブーストクロックともに大きい方が処理能力が高いと考えて良いです。

ただし、メーカー、世代が異なるCPU同士を比べる際は注意が必要です。
CPU内部のキャッシュメモリの増加やアーキテクチャ(ハードウェアの基礎設計や命令処理の方法)の改良により、同じクロック周波数のCPUでも新しいものほど処理能力が高くなっています。
従って、同じシリーズ、同じ世代のCPUを比較する際は性能の指標になりますが、メーカー、世代が異なる場合は一概にクロック周波数が高い方が高性能とは言えないのです。

オーバークロック(倍率ロックフリー)モデルか否か

オーバークロックとはユーザー側の設定によりクロック周波数を定格以上に上げることです。
無理な設定をすると故障するリスクもありますが、CPUの性能をさらに引き上げることができます。

CPUにはオーバークロックができるモデルとできないモデルがあります。
Intelの場合、品番の末尾にKが付いているものはオーバークロック可能です。
AMDの場合、品番の末尾にXが付いているものはオーバークロック可能です。

(2019年8月21日 訂正)「AMDの場合、品番の末尾にXが付いているものはオーバークロック可能」と記載していましたが間違いでした。AMD Ryzenは、末尾のXの有無に関わらずオーバークロックが可能でした。お詫びして訂正いたします。

オーバークロック可能なモデルは値段は上がりますが、ベースクロック、ターボクロックも高くなっており、オーバークロックをしないユーザーでも予算が許せば買う価値はあります。

TDP(熱設計電力)

TDPとはThermal Design Powerの略で日本語では熱設計電力と訳されます。
単位はW(ワット)で、設計上想定される放熱量を示しています。
数値が大きいほど、たくさん電力を消費して、多くの熱を発生させることになります。
一般に処理能力の高いCPU程TDPは大きくなっていきます。

TDPはCPUの冷却システムと電源の容量の検討の際に必要になります。
放熱量が大きい場合は、大型のCPUクーラーや水冷式のクーラーなどを考える必要があります。
電源容量については、各パーツの消費電力の合計から余裕を持った電源を考える必要があります。

性能が同程度であればTDPが小さいCPUの方が優秀なCPUと言えます。

現行製品のスペック比較

現行製品のスペックを表にまとめてみました。
Intelは第9世代(9000番代)の製品、AMDは第3世代(3000番代)と第2世代(2000番代)のみを載せました。
Intelの第9世代は発売からある程度時間が経ち、価格的にも第8世代を買う理由は薄れている一方、AMDの第3世代は発売したばかりで、価格的に第2世代にも魅力があるためです。

メーカー 品番 価格 コア数 スレッド数 ベースクロック ターボ TDP
Intel Core i9 9900K 56775円 8 16 3.6GHz 5.0GHz 95W
Core i9 9900 56670円 8 16 3.1GHz 5.0GHz 65W
Core i7 9700K 45890円 8 8 3.6GHz 4.9GHz 95W
Core i7 9700KF 42800円 8 8 3.6GHz 4.9GHz 95W
Core i7 9700 43787円 8 8 3.0GHz 4.7GHz 65W
Core i7 9700F 40999円 8 8 3.0GHz 4.7GHz 65W
Core i5 9600K 28061円 6 6 3.7GHz 4.6GHz 95W
Core i5 9600KF 28959円 6 6 3.7GHz 4.6GHz 95W
Core i5 9400 22547円 6 6 2.9GHz 4.1GHz 65W
Core i5 9400F 18974円 6 6 2.9GHz 4.1GHz 65W
AMD Ryzen 9 3800X 64584円 12 24 3.8GHz 4.6GHz 105W
Ryzen 7 3800X 50738円 8 16 3.9GHz 4.5GHz 105W
Ryzen 7 3700X 42984円 8 16 3.6GHz 4.4GHz 65W
Ryzen 5 3600X 32183円 6 12 3.8GHz 4.4GHz 95W
Ryzen 5 3600 25898円 6 12 3.6GHz 4.2GHz 65W
Ryzen 7 2700X 27377円 8 16 3.7GHz 4.3GHz 105W
Ryzen 7 2700 24734円 8 16 3.2GHz 4.2GHz 65W
Ryzen 5 2600X 20484円 6 12 3.6GHz 4.2GHz 95W
Ryzen 5 2600 15787円 6 12 3.4GHz 3.9GHZ 65W

※価格は価格.comの最安値(2019年7月14日時点)を引用。変動している可能性があります。

ベンチマーク

残念ながら私自身では色々な製品のベンチマークを比較することはできませんが、ありがたいことに詳細な比較とまとめをして下さっている方がいるので、いくつかのサイトのリンクを貼っておきます。

CPUをベンチマークで性能比較|おすすめPC徹底比較
CPUをベンチマーク(PassMark)で性能比較し、さらに内蔵GPU(iGPU)をiGPU-FP32ベンチマークで性能比較、価格との割合でコストパフォーマンスも比較します。

↑ベンチマーク値だけではなく、スペック、コストパフォーマンスまで一覧になっており、各項目の昇順、降順の並べ替えも可能で見やすいです。
第3世代Ryzenのベンチマークも既に載っています。

【2020年版】分かりやすいCPUの性能比較表【ベンチマーク】 | ちもろぐ
「最新のCPUって性能どれくらい?」「この中古CPUの性能は?」を分かりやすく知るために、見やすくて分かりやすい「CPUの性能比較表」を作ってみた。性能(ベンチマーク)はPassmarkとCinebench R15をまとめ、ゲームに有利なシ

↑今の所第3世代Ryzenは載っていませんが、こちらもとても見やすいです。

403 Forbidden

↑はこちらはベンチマーク結果の一覧表ではありませんが、第3世代RyzenとIntelのライバル製品との比較結果が載っています。

これらの結果を見ると第3世代Ryzenがマルチスレッド性能で非常に優れており、シングルスレッド性能も第2世代から改善してIntelのライバル製品に対抗できるレベルになっていることが読み取れます。

Intel Core iシリーズとAMD Ryzenシリーズの特徴

ターボクロック周波数はIntel優位

ライバル製品同士(例えばCore i9とRyzen 9など)を比べるとターボクロック周波数はIntelのほうが基本的に高いです。
また、オーバークロック耐性もIntelの方が高いようです。
その結果として、シングルスレッドの性能(マルチスレッドに最適化されていないゲーム、Photoshopなど)はIntelが優位のようです。
(ただし、第3世代Ryzenはアーキテクチャの改善によりシングルスレッドでもIntelと同等というレビューも見られ、現状は差が縮まっているようです。)

コア数・スレッド数はAMD優位

ライバル製品同士を比べるとコア数・スレッド数はAMDが優位です。

9同士の比較では、Core i9は8コア16スレッド、Ryzen 9は12コア24スレッドでコア数自体Ryzenが多いです。

7同士、5同士ではコア数は8コア、6コアで同等ですが、Intelはハイパースレッディング無しのため、スレッド数はAMDが倍になっています。

その結果として、マルチスレッドの性能(動画エンコード、マルチスレッドに最適化されたゲーム、CGのレンダリング)ではAMDが優位のようです。

価格は若干AMD優位

現状ではライバル製品同士で価格差は小さいですが、第3世代のRyzenが発売直後の状態で同等なので、しばらく待つとAMDの方が安くなる可能性が高いと思われます。
また、第2世代のRyzenは非常に安くなってきているので、コスト重視の場合は選択肢に入れても良いと思います。

AMDは基本グラフィック機能無し、Intelは選択可能

IntelのCPUはグラフィック機能も内蔵されいるモデルが多く、グラフィックボード無しでも使用することが可能です。
第9世代の品番の末尾にFが付いているモデルのみグラフィック機能が省略されています。

AMDの多くのCPUはグラフィック機能が内蔵されておらず、別途グラフィックボードが必須となります。ただし、品番の末尾にGがついているモデルはグラフィック機能が内蔵されています。

自作派のユーザーはグラフィックボードを載せる方が大半だと思われますので、グラフィック機能の有無はそれほど気にしなくても良いかもしれません。

まとめ

AMDのRyzenシリーズ登場のおかげでCPUの開発競争、価格競争が起きており、PC自作ユーザーにとってはうれしい状況になっています。

今買うとしたら、最近発売された第3世代のRyzenシリーズが良いでしょう。
マルチスレッドの性能が高い、第2世代で弱点だったシングルスレッドの性能も改善、コストパフォーマンスも良く、最近のAMDの勢いはすごいです。

私自身が何を買うかはまだ完全に固まったわけではないのですが、Ryzen 7 3700Xが第1候補です。自分の用途とコストパフォーマンスを考えるとRyzen 5 3600もかなり魅力的ですが、買い替え頻度が少ないので多少奮発しても良いかなと思っています。

コメント

  1. Yura より:

    AMD Ryzenは、型番にXがついてなくても、オーバークロックできますよ

    • さとうのすけ さとうのすけ より:

      Yuraさん、ご指摘ありがとうございます。
      申し訳有りません、勘違いしておりました。
      記事の方も修正させていただきます。

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